2月14日の天皇杯準決勝、千葉ジェッツ対宇都宮ブレックスは、前者が最大21点のビハインドからの逆転勝利(78-72)という劇的な展開となった。
千葉の戦いぶりが称賛されるべきだが、そこは誰もが思うことなので、ここはあえて宇都宮視点で振り返りたい。
一言で言うと、宇都宮は「よく耐えた」。彼らにとっては屈辱的な敗戦だったことは間違いないものの、その中でブレックスというチームが何たるかを示した試合になったようにも思われた。
16点差を追う形でハーフタイムに入った千葉は後半、ディフェンスの強度が上がり、攻撃では富樫が何本もクラッチショットを決め、宇都宮に迫る。会場は千葉のホーム、船橋アリーナ。黄色いTシャツなどを身にまとった、熱心な宇都宮のファンも少なくはなかったが、千葉を後押しする声援が会場に鳴り響き、千葉が追いつくのは時間の問題のようにも感じられた。
ところが、千葉も追いつけそうで、追いつききれない。追い抜けない。第3クオーターの半ばには実質、千葉が宇都宮の背中をついに手を触れているが、そこから宇都宮も簡単に彼らに追い抜かれたわけでなく、第4クオーターの残り7分強で富樫勇樹が3Pを決めてようやく千葉がこの試合で初めてのリードを奪った(63-61)のである。
そして、そこからの両者はどちらかが大きな差をつけることなく、試合終盤まで一進一退の攻防を繰り広げている。
「相手に連続得点される」という課題をどう解決していくか
もちろん、「負けは負け」だ。しかも21点という差を守りきれずに敗れたのには言い訳にならない、相応の敗因もあったはずだ。
実際、佐々宜央ヘッドコーチは、後半、千葉のディフェンスでの圧が上がったなかで宇都宮のオフェンスが「脚とボールが止まってしまった」「横にパスを回してタフショットになっていた」と弁を述べている。
ただ、「並のチーム」ならば、千葉の猛攻に縮こまり、一気に追い抜かれて敗れ去っていたのではないか。そう問われると佐々HCはこう話している。
「おっしゃるとおり、一気に持っていかれてもおかしくなかった。あそこで粘れるというところが、今年の選手たちに質としてあるのは間違いないと思います。そこは選手たちを称えてあげたいと思っていますし、本当に戦い抜いてくれたと思います」
もちろん、敗戦した中で選手たちを「称える」だけでは「勝者」たりえない。佐々HCは自身のチームが今シーズン、開幕から好成績で来ている一方で、相手に連続して得点を許し流れを作られてしまう試合が何度かあり、今回の千葉との天皇杯の試合にもそこを解決せずに臨んだことも結果として敗因の一端となってしまったと語っている。
言うまでもなく、宇都宮にはまだシーズンで優勝を目指す権利が残っており、今回の大逆転の黒星は苦く、しかしよく効く薬になるかもしれない。
「相手にラン(連続得点)を作られてしまうところを解決できれば、このブレックスはまたさらに上に行けるなと思っているので、そこに対してしっかりアプローチをして後半戦、また臨んでいきたいです」
佐々HCはそう力強い言葉を口にして、試合後の記者会見を締めた。