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3Pの確率は悪く、速い展開のオフェンスに持ち込めない。そうしたところからの焦りか、ターンオーバーも多い――。
22日のアジアカップ予選Window1のグアム戦。前半の日本の戦いぶりは、相手がFIBAランキングで50も下(日本は26位、グアムは76位)とは思えないほど歯がゆいもので、8642人とアリーナを埋めた観客はワールドカップ以来の試合で大いに盛り上がる機会を探しながら、しかし、なかなかそれができないでいた。
そんな重たい、沈んだ空気を一転させたのが、河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)のディフェンスだった。
第3クォーター、残り4分弱。グアムのポイントガード、トーマス・カルボがドリブルでボールを運んでくると、ハーフウェイライン近辺で待ち構えていた河村が、彼を右へ、左へと動きながらかわそうとする相手に対して体を当てつつ、かつ足を小刻みに動かしながらそれを阻もうとする。
結果、河村はカルボの手中からボールの奪取に成功。そのまま速攻へ移ろうとした刹那にカルボから妨害を受け、これがアンスポーツマンライクファールの判定となった。
日本はこのクォーターでも最初の3分以上、得点がなかったところから18歳の新鋭、川島悠翔(NBAグローバルアカデミー)が連続でレイアップを決めるなどで、会場は徐々に「温まる準備」ができていた。そして、この河村によるディフェンスプレーが出たことで、日本色の赤に染まった有明コロシアムはようやく最高潮の盛り上がりとなった。
日本のトム・ホーバスヘッドコーチは試合後、先発起用した河村が前半、少々疲れているように見えたために、後半の頭は富樫勇樹(千葉ジェッツ)とテーブス海(アルバルク東京)を使ったと話したが、途中で河村をコートに戻してからはディフェンスで相手に良い圧をかけてくれたと振り返った。
同HCは、河村が「攻守で流れを変えることのできる選手」としたが、その食らいつくようなディフェンスは「鮫のよう」(ホーバスHC)と表現している。
「彼には常に、ボールに圧をかけてほしいと思っていますが、彼は鮫のようです。鮫が食べ物の匂いを感じたらそこへ食らいつきに行くのです」(ホーバスHC)
ホーバスHCの叱咤もあり、河村はこの2年ほど大幅に得点力を向上させてきた。Bリーグシーズン中も含めてメディアからの質問もオフェンスに関してのものが多い。だが振り返れば、日本代表で最初に河村が躍動を見せたのは彼のディフェンスによってだった。
ディフェンスで強烈な印象を残した2022年アジアカップ
2022年、ジャカルタ(インドネシア)開催のFIBAアジアカップでのカザフスタンとの日本の初戦における河村のプレーぶりが、いまだに強い印象として残る。
日本はグアム戦同様、前半苦戦し、45-48とビハインドを背負ってハーフタイムに入る。だが第3クォーター、河村による密着ディフェンスが相手のリズムを崩し流れを掴んだ日本は、最終的に100−68の大勝を収めた。
日本には河村と富樫という、小柄なポイントガードがいてよく比較される。ホーバスHCは身長は似たような2人はしかし、まるで違う特性を持つ司令塔だとこのカザフスタン戦後、述べていた。
「富樫はオフェンスのゲームマネジメントやスコアリング。アシストも上手で、経験やリーダーシップもある。河村はディフェンスから。彼の役割としてはそこから始まるんです。ディフェンスでフルコートでピックアップ(プレスをかけること)をして相手のリズムを崩します」(ホーバスHC)
グアム戦ではチームトップの15得点を上げた河村だが、「役割通り」のディフェンスで相手を翻弄し、そして味方の士気を上げたというところの印象が強かったように思われた。