©Kaz Nagatsuka
香港国際空港に到着すると、バスに揺られ目的地のマカオを目指した。同空港からマカオへは東京アクアラインを思わせる長いトンネルと、横浜ベイブリッジを想起させる大きな橋脚を持つ橋を経て、ほとんど一直線で向かうことができた。
マカオの新聞社の人に聞けば、この季節は天候が安定してないそうである。このことはマカオに到着してから聞いたのだが、実際、橋の上を走っている間は霧のような雨が車窓を濡らし、その外に見える青がかった灰色の海は荒れていた。
バスの正確な目的地はマカオ港だった。我々、日本からのメディア一行はここで晴れて入国審査を受けた。ここから無料のシャトルに乗り継ぎ、我々の目的地であるスタジオシティマカオのあるコタイ地区に向かった。コタイはマカオの人口密集緩和のためにできた埋め立て地域だそうである。
もっとも、現在のコタイは豪奢なホテルやカジノ、リゾート施設が居並ぶ場所となっている。マカオは昔からある旧市街にもカジノがあり従前からここは「アジアのラスベガス」などと呼ばれてきた。が、その異名は今やこのコタイ地区こそがふさわしいようにも思える。それほどにこの場所には、巨大かつありとあらゆる色彩が集まったかのような人口建造物が空へ向かっていくかのように建っている。
前段が長くなってしまったが、ここで東アジアスーパーリーグ(EASL)の4強が戦うファイナル4が開催される。昨年はEASLがシーズンを通して試合を重ねる実質的な初年度となったが、フィリピンのセブ島で行われた昨ファイナル4では千葉ジェッツが優勝を収めている。
今年のファイナル4に進出したのはBリーグ代表の琉球ゴールデンキングスと広島ドラゴンフライズ、台湾のニュータイペイキングス(TPBL)と桃園パウイアンパイロッツ(Pリーグ+)となっている。3月7日の準決勝では広島とニュータイペイが、そして琉球と桃園が対戦する。
6日には全チームによる前日練習が行われた。練習は台湾の2チームから先に行われた。日本の2チームは前日の夜にBリーグのシーズン戦を戦っており、マカオ入りしたのがこの日の夕刻頃となった。同2チームの練習は、必然的に夜に行われた。
琉球の主力が練習不在の中、クーリーはやってきた
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広島と琉球の練習の雰囲気には、若干の違いが見られた。先に練習した広島は大半の選手が参加した状態で与えられた時間を費やしていたのに対し、琉球は前日の広島との試合でプレーをしていない者などプレータイムが少なかった選手たちを除いた主力らはほとんど見当たらなかった。
これについて琉球の桶谷大ヘッドコーチは、広島が「よく練習したな」と冗談めかして話した。その中で同HCは「ジャック・クーリーがなんで(練習に)来たのかわからないですけど」ともう1つ、冗談を加えて笑いを誘った。
桶谷HCは、クーリーに「気合が入っている」と話した。これには冗談のトーンはない。
「(クーリーは)ギャンブルが大好きなんですよ。カジノ大好きなんですよ。それなのに『もう俺は今回、ノーカジノで』って言っていて。シュートも打って、マッサージも受けてもう、『レディな状態で試合に臨む』と言っていたので、かなり気合が入っているなと思います」
そのように述べた桶谷HCに追い打ちをかける。なぜ、クーリーはそこまで「気合が入っている」のかについてだ。
「なんですかね、今シーズンはもうずっと、(EASLの)予選からそんな感じでしたね。やっぱり悔しかったと思いますよ。去年も負けるたびに、ああだこうだと言い訳をしながら、でもそれを言うっていうことはこの大会で勝ちたいというのもあったと思いますし、本人の内にあるプライドみたいなものもあると思うので。やる以上は優勝したいとか、勝ちたいというのはあるんじゃないかと思います。今回、すごく正直な気持ちがそういう行動にでているんじゃないかなと思いますね」
そのクーリーに話を聞いた。彼はマッサージへ向かうところのようだった。桶谷HCが言うように、カジノではなかった。
前日の広島戦は87-86と最後まで勝負がわからない激戦となった。そこから中1日でファイナル4準決勝に臨むことについてクーリーは「僕らはバスケットボールが好きだし、なんとかしてみせるさ」と話した。コート上で激しく吠える印象が強いのとは対照的に、翌日までエネルギーを蓄えるかのような静かな口調だった。
「台湾のチームに対してやや不利な部分はあるかもしれないけど、それでもやりとげなければならない。いつもいつも、物事が公平であるわけではないしね。でも僕らはプレーができることが嬉しいし、明日、いい試合でいい結果が得られることを楽しみにしているよ」
広島の山崎稜「EASLは何が何でも取りたい」
一方の広島。マカオ入りしたことで「みんな高揚感というか、気持ちが高ぶるところはある」と話したベテランシューターの山崎稜は、日本勢としての連覇がかかる今回のファイナル4に臨む気持ちを次のように述べた。
「去年、千葉が優勝をして、今年は広島と琉球がでていますが、日本のチームが連覇をできる可能性はおおいにあると思いますし、やっぱり自分たちが優勝をと強く思っています。今シーズン、なかなかレギュラーシーズンでいい勝利をと残せていないので、このEASLは何が何でも取りたいと思っています」
人口的な建物と人工的な色々が集まる埋立地であるコタイで、東アジアのクラブナンバー1を決める戦いが始まる。その非日常さは、あるいはその舞台としてふさわしいようにも思えなくもない。