にわかに目を離せない存在になりつつあるシーホース三河で、ポイントガードを担う長野誠史と久保田義章による「エースガード潰し」とでも呼べるディフェンスが同軍の欠かせない「武器」となっている。
12月30、31日のアウェイでの横浜ビー・コルセアーズ戦は1勝1敗に終わったものの、2人は両試合で河村勇輝をそれぞれ13得点、14得点と彼の平均を約10点下回る数字に封じた。河村はまた2試合で8つと5つのターンオーバーをしたが、これも三河にとっては、長野と久保田による噛みつくようなディフェンスのたまものだ。
前日の1点差の敗戦から空けて31日。三河は89-72の快勝を収めた。試合時間残り5分弱。オフィシャルタイムアウトから横浜BCボールで再開となり、長野が河村に密着マークによるディナイで、スローインからのボールを彼に持たせず、結果、24秒バイオレーションを誘引した。この瞬間、三河が勝利をぐっと手繰り寄せたと言えた。
「『シャア!』ってなりますね。やっぱりチームとしても勢いがつくことだと思っていますし、チームメートもハイタッチとかしてくれるので、その次も止めてやろうという気持ちにもなります」
この試合後、長野は高揚した表情でその場面を振り返った。
11月4日の、これもアウェイの千葉ジェッツ戦。前半終了時に10点のビハインドを背負った三河だったが、後半、千葉Jを36得点に押さえて逆転勝利を果たしている。この時にも長野と久保田が相手の富樫勇樹に3Pを1本も決めさせない(試合を通しても14分の2に抑えた)など、ディフェンス面で大きく貢献した。
従前から「まずはディフェンスから」の気持ちで試合に臨んでいたという長野は、しかし、NBAのアシスタントコーチを経験しているライアン・リッチマン氏が今シーズンからヘッドコーチとなって自身が変わったところについてこう話している。
「去年までもチームでディフェンスをするというのはありましたが、去年よりも今年は、全員で声を出して、ポジショニングもしっかりこうやろう、というのを常に練習からやっていますし、相手によって自分たちのディフェンスの仕方を変えながらやるというのは一緒なんですけど、河村君みたいな点数を取ってくる子にはしっかりとフェイスガードなどいろいろ試しながらやっているので、そういうところは去年とは違うところかなと思います」(長野)
リッチマンHCは上述の横浜BCについて「サトシとヨシは今週末、河村にタフなプレーをさせながらすばらしい出来だった」が、彼がいつも強調するのは攻守を問わず「チームとして連動すること」だ。河村を止めるにしても「1人の選手でできることではないし、チームとして彼を迷いを与えなければならない。だからガード陣だけではなく、ビッグマンたちもすばらしい仕事をしたと思っている」と語った。
三河の今季ここまでの平均失点はB1 7位の75.9だが、ディフェンシブレーティング(100ポゼッションあたりの平均失点)は104.0で同5位と上位だ。連動することが肝要だとはいえ、ディフェンスの「先陣」に立つのはやはりPGの長野と久保田だ。その意味では今後、三河がさらに上昇気流に乗るとすれば彼らの働きが鍵の一つになるとも言えるだろう。
盛り上がるベンチメンバーの姿を見せてチームを鼓舞
長野によれば、チームスタッフによって選手たちが試合中にどれだけ貢献しているかのビデオクリップを作り、それを見せて気持ちを盛り上げてくれているという。これがリッチマンHCのアイディアなのかどうか彼にも定かではなかったが、たとえコートに立つ時間が少なくともベンチを盛り上げているところをクリップに盛り込み、同HCが「見ろ。こうやってベンチも頑張ってるんだ」と全体を鼓舞するそうだ。
「ベンチでも『イェー』みたいに目立とうとしている人もけっこう、多いです(笑)。チーム全体で戦っているよっていうのを僕らに教えるためにそういうクリップを出してくれるんですよね」
当初、東地区、西地区と比べてポストシーズン枠争いのできるチームは少ないかと目されていた中地区だが、現在、17勝9敗で同地区3位につける三河の今後の出来が、同地区のプレーオフレースを面白くするのではないか。
*数字等はすべて1月5日現在のもの