「『頑張れ、頑張れ、頑張れ』だと多分、もう間に合わなくなってしまう」
1月28日の、対島根スサノオマジックの試合後、横浜ビー・コルセアーズの青木勇人ヘッドコーチが発した言葉だ。
横浜BCは、島根との2連戦で連敗を喫した。ただ黒星が2つ並んだというだけではない。初戦では前半に57失点、次戦では61失点と相手にほとんど蹂躙される、落胆を覚える負け方だった(最終スコアはそれぞれ98-86、94-73だった)。
何かここから変化を考えているかと問われた青木HCは、ディフェンスの手札を増やすことを挙げたが、冒頭のコメントはその中で出てきたものだ。
この連敗で今シーズン、成績を14勝19敗とし中地区での順位は8チーム中6位と沈む。昨季は同地区2位でBリーグ初のチャンピオンシップ出場を果たすなど躍進し、2023-24は「優勝」を掲げて入ったチームがそれを達成する権利――つまりポストシーズンの椅子の獲得――すら掴めない可能性が徐々に大きくなりつつある。
河村勇輝を中心とした爆発力のあるオフェンスの印象もあるいは強い横浜BCだが、基本とするのは粘り強いディフェンスから速い展開のオフェンスにつなげることをスタイルとする。だがインサイド型の、リング周りで身体を張ることのできる選手が少ないこともあって期待するような守りはできていない。
今季の平均失点は82.7点(B1 18位)、100ポゼッションあたりの平均失点を指すディフェンシブレーティングは112.9(B1で下から6番目)と、数字がそこを如実に表している(失点を止められないことがオフェンス時での3Pやフリースローの確率の悪さにもつながっているのではないか)。
厳しい現実にどう立ち向かうのか
シーズンの中間地点を越えたばかりだが、青木HCはそこにさしかかる直前までは自分たちの「ベーシックな」ディフェンスに「こだわりすぎたところがあった」と話す。が、残り試合数が少なくなっていく中で、それではほころびが大きくなっていってしまうということで、敷いたディフェンスが機能しないのであれば「プランB、プランC」と、これからは次の手をすばやく打っていかねばならないと強調している。
「ベーシックなものを強度高くやって勝ちにつなげるというのが一番の理想だと思っています。ですが、ここまでシーズンを戦ってきたところに関しては、それだけではもう『まくれない』というのが現状だと感じています」(青木HC)
チーム最年長、デビン・オリバーはポジティブさと明るさが売りの選手で試合に負けても気持ちの切り替えが大事だと語っていたが、横浜BCの置かれる現状を鑑みるとそれも徐々に難しくなっていると語る。
「(チャンピオンシップ進出への)『扉』は自分たちが望む、望まないに関わらずどんどん早く閉じていってしまっている。僕らはそれぞれが自分たちに何ができるか常に考えている。だけど、ここからの2、3週間で何かしらの変化がもたされる必要があると思う」(オリバー)
オリバーが最年長としたが彼にしてもまだ31歳でしかなく、つまりはチームは良くも悪くも若い。昨シーズン中、青木HCはチームが徐々に調子を上げていく様を「成功体験」という言葉をことあるごとに使いながら、選手たちが自信を得ていく過程を表現していた。
エースの立場にある一方でまだ22歳と若い河村はそれを「勝ちぐせ」と別のフレーズで表した。対して今シーズンの白星を増やせない状況は、総じて経験の浅いチームに精神的な影響を与えていることを示唆している。
「チームとしてどうしたら勝てるのかっていう不安だったりプレッシャーみたいなところとの戦いが今続いているのかなと思います。昨シーズンは勝ちながら自分たちの勝ち方や自信をつけて勢いを持ってプレーができていたんだと思いますが、今シーズンは勝てない状況でチームとしてどうすればいいのかというストレスとの戦いもあるのかなと思います」(河村)
横浜BCが連続で得点しても強敵の島根がすぐに点を入れ返し、そして徐々に点差を広げられると、ホームである横浜国際プールを埋め尽くした観客のボルテージは徐々に下がっていった。
チームも、彼らファンも、シーズン前半はたとえ試合に負けても、「今は」波に乗れなくともいつかは上昇を始めるものだと信じていたはずだ。
しかし、シーズン半ばを過ぎたところでの島根への完敗は、厳しい現実を彼らにつきつけた。