「ディフェンスをすることが楽しい」。川崎ブレイブサンダース新加入の野﨑零也が示す矜持
富山グラウジーズ戦では瞬時の判断で相手の速攻を自らのファールで「潰す」といった、地味ながらコーチ陣も手を叩くファインプレーを見せた
28歳。白鴎大学時代の特別指定選手としてプレーした年を含めれば、プロで8年の経験があるだけに、今季、川崎ブレイブサンダースというビッグクラブに移籍してきた野﨑零也に、浮足立った様子はない。
20日の富山グラウジーズ戦で今季最多となる18分弱の出場時間を得た185cmのシューティングガードは、スティールを2本記録。また川崎に来てから初めてホームコートで3Pを沈めるなど活躍し、87-70の快勝に貢献した。
この試合の第2クォーター中盤。川崎のシュートが外れて富山の伊藤駿がディフェンスリバウンドからすかさず速攻をしかけた場面があった。しかし、野崎はドリブルで上がる伊藤をハーフコート付近で体をぶつけて、ファール。相手の攻撃の芽を摘んだ。
瞬時の判断に、佐藤賢次ヘッドコーチら川崎ベンチの面々も立ち上がり、拍手で彼を称えた。川崎は機動力に難のあるニック・ファジーカスがコートにいる際の相手のトランジションをどれだけ抑えられるかは、ディンフェスにおける一つのポイントだ。
同クォーターでは、やはり今季新加入のSG/SF飯田遼も同様に、相手の速攻を早めのファールで潰している。佐藤HCはチームのハーフコートディフェンスが良くなっていることもあり、選手たちが自分たちのファールを使うという「自己犠牲」(佐藤HC)を払いながら、相手のトランジションオフェンスを止めることが肝要であると試合後、語っている。
快勝だったこともあり自身のパフォーマンスには一定程度、評価を与えられるのではないかと水を差し向けると、野崎は「いや、そんなことはないですね」と少しの苦笑を表情に浮かべて返してきた。第3クォーター終了直前、伊藤に決められたジャンプシュートはファールを使って止められたはずだといった反省もあったからだ。
「自分のプレーを良いとは思えないというわけじゃないんですけど、評価は厳しくしようと思っています」(野﨑)
そう話した野﨑。これまでファイティングイーグルス名古屋や群馬クレインサンダーズでプレーしてきた彼だが、若い頃には「オフェンスをやればいいやという考え」(野﨑)だったという。しかし、キャリアを重ねる中で「ディフェンスができなければ試合に出られない」ことを理解していき、今ではディフェンスをすることが楽しいとすら感じていると口にする。
「ルーズボールとかそういうのを泥臭くやるのがすごく大切なことなので、そこが好きになってきたというか。泥臭いところで(チームに)貢献したい、陰で支えたいというのがあります」
野﨑はまた、相手のエース級の選手とマッチアップし、十全に仕事をさせない時にもやはり快感を感じている。
「今日だったら宇都(直輝)選手に付いたときには、ちょっと嫌なことをしようとか、すごいモチベーションがあがりますし、やってやろうという気持ちにもなります」(野﨑)
川崎は7日の、三遠ネオフェニックスとのシーズン開幕戦を落としている(86−75)。この試合後、佐藤HCはベンチから出てくる選手たちが「ミスを恐れてちょっとビクビクしながらやっているような時間帯もあった」と述べ、彼らに激しいプレーをと奮起を促した。その一方で指揮官は「零也は良かった」と、野﨑の攻守における体を張ったプレーぶりを評価した。
今季も新加入の選手が数人いて、まだ開幕から間もない現段階ではチームはケミストリーを高めながら様々なものを試している段階だが、野﨑という泥臭く「ディフェンスが好き」だという自己犠牲の精神溢れる選手が入ってきたことは、チームがより高いレベルの一体感を生み出していく上でプラスだと言えるだろう。