©Kaz Nagatsuka
少年少女のいわゆる「ユース世代」に力を入れることが、まだ世界との差のある日本のバスケットボールの強化において肝要である。Bリーグでは各クラブにU15、U18チームを持つことを義務付けているが、様々な大会を催すことで若い選手たちに切磋琢磨の場を提供している。
その中で、現在東京・代々木第二体育館で開催中の「BリーグU18インターナショナルカップ2025」は、Bユースクラブに加え、海外からの招聘チームを交えて行われている(大会は2021-22以来開かれているがコロナウイルス蔓延の影響で海外チームを招聘しての開催は今年が2回目)。代表チームに所属でもしていない限り、この年代の選手たちが外国の選手たちとコートをともにすることは、従前にはまずなかったことだとしていいだろう。ゆえに、意義のある大会だ。
2月22日には今大会の初日が行われ、昨年大会の優勝チーム、フラポート・スカイライナーズ(ドイツ)がBリーグU18選抜チームと対戦し78-71で前者が勝利した。最も小さな選手でも身長185cmあり、平均では190cmをゆうに超え体つきもシニアと大差のないように見えるスカイライナーズの大きさは、最長身が193cm(田中大貴、宇都宮ブレックスU18)のBリーグU18選抜に対して明確なアドバンテージとなっていた。
このことは、同日に行われた豪ヴィクトリア選抜チームと、高校代表として参加している岐阜・美濃加茂高校との対戦でも同様であった。
その中で、スカイライナーズのトワガ・ビートカヘッドコーチが試合後に興味深い話をしてくれた。昨年大会でチームが優勝した際も指揮官を務めていた同氏は、日本のチームのプレースタイルに変化を感じると話したのだ。
「この大会以外にもいくつか日本の試合を見ていますが、昨年以前だと日本のチームはアメリカのスタイルでのプレー顔多かったように思えます。ですが、今はヨーロッパの影響を感じます。彼らはツーマン、スリーマンアクションを使うようになっていると感じます。いわば私たちが見慣れた形のものです。
また、彼らは体が強くなっていると感じますし、さらに彼ら本来のスプリントの力を利してよりディフェンスでコミットメントを見せるようになっています。昨年から今年まででもそうした変化を感じますし、彼らのプレーのしかたは確実に進化していると言えるのではないでしょうか」
この大会は、日本の選手たちがより大きな海外のチームと対戦することができるという端的な意義がある。しかし、遠く外国からやってくる彼らにとってもオンコート、オフコート恩両面で大きな価値があるとビートカHCは語ってくれた。
「まず大会参加について、Bリーグからの招待をとても名誉だと感じるとともに、日本に来ることは私たちにとって様々な点において大きな経験となります。選手たちは文化的な経験ができますし、外国に来ることでチームの団結を強める機会ももらっています。選手たちは街に出て、異なる文化の国でどう振る舞うべきか、どのようにして街を歩くべきなのかといったことを学ぶことができるのです。
そしてコーチとしては、日本のチームと対戦できることもまたすばらしいことです。日本のチームはとてもハードに、タフにプレーをしてきますし、自分たちの最良のゲームをしなければいけないと感じさせてくれます。もしふがいない、本来のレベルではないプレーぶりをしたならば、痛い目を見ることになります。なぜなら、日本のチームのプレーぶりからは毎回、彼らがいかに全力をつくしているかを感じているからです。
私たちのリーグは来月からプレーオフが始まるのですが、それを前にこのような機会を得られたことでチームが「同じページ」にいて、より激しいディフェンスや速いテンポのオフェンスに対して準備をさせてくれるものだと思っています」
スカイライナーズのSF/PFで主将も担うイヴァン・ツルンヤツも原則、速さを生かしたプレーをする日本のチームとの対戦は得るものが多いと語った。
「日本のチームは僕たちとはとても異なるタイプのバスケットボールを展開しますし、彼らとの対戦では僕たちも普段とはことなる形によって勝利を模索しなければなりません。そのことは僕たちのチームにとってとても有益なことです」
BリーグU18選抜に対してはどのようにして勝利を手にすることができたかを問われると、ツルンヤツは「本来、僕らはもう少し遅くプレーをするのですが、日本のチームがとても速いペースでプレーをしていましたから僕らもテンポを上げていいトランジションができたところがよかったと思います」と返した。
やや余談めいているかもしれないが、ツルンヤツは昨年の昨年のFIBA U17ワールドカップでドイツ代表として線試合で先発出場を果たし、平均7.9得点を記録した。実力者である。スカイライナーズで主将を務めていることからもわかるように、リーダーシップにも長じており、上の試合中にはチーム内での連携がうまくいかない時などは厳しい表情と大きな声で味方に声をかけていたのが印象的だった。
現段階で身長が204cmで体重が100kgとすでに堂々たる体躯を持つツルンヤツ。ビートカHCも「万能ですばらしいスポーツマン」だと彼の才能を買っている。
ツルンヤツに将来の自身の展望を聞くと「僕はユーロリーグがとても好きですしユーロリーグに出場ができる良いチームにいけたらと思いますし、ドイツ代表としてもプレーがしたいです」と語った。
日本とドイツの代表が2023年のワールドカップ、昨年のパリオリンピックと連続して対戦した。ツルンヤツもそれらの試合を視聴したという。
今回のU18インターナショナルカップで対戦する日本のチームの面々からも、将来、日本代表に招集され、あるいはツルンヤツのいるドイツと対戦するかもしれない――。そんなことを彼にさしむけると、ツルンヤツは「本当ですね。そう願っていますよ」と柔和な笑顔でそう話した。