©Kaz Nagatsuka
だいたい、「その手の言葉」を口にする選手は、とっつきにくい。平たくいえば、嫌な奴だ。
だが、アルバルク東京のライアン・ロシターにそういった面倒な印象は薄い。取材をすればフランクに応じてくれる。
「その手の言葉」を口にする選手、とは自身の活躍についてそっけなく、チームが勝ちさえすればいいという、ある種の紋切り型の答えに終始してしまうようなそれを指す。
ただこうしたことを言う選手も、大きく2種類に分かれると言える。事細かなことを答えるのが面倒だから勝てさえすればいいというタイプと、本当に勝つことのみが唯一最大の価値基準であるというそれだ。
ロシターは、明らかに後者だ。
10月13日に行われた横浜ビー・コルセアーズとのシリーズ、2戦目。競った展開の中、ロシターは最終クオーターの残り3分から10得点を挙げ、アルバルクが79-68で開幕から4連勝目を収めた。
27得点、17リバウンド、3スティールと、攻守にわたって際立った活躍をしたロシターだったが、「試合全体で相手が(他の選手よりも)僕に得点をさせるように仕向けてきていたから、ピック・アンド・ロールディフェンスで僕が空くことも多かった」と、自分の手柄というよりは相手の守り方がそうだったからと試合後、冷静に振り返った。にべもなかった、としてもいいかもしれない。
試合はどれ1つ取っても同じであるはずもない。生きものである。ロシターにとって27得点したのも試合の流れがそうだったから、ということでしかない。
アルバルクは好選手が揃う強豪で、試合によって「お立ち台」に上るような選手が替わる。だからこそ、誰1人として突出した脚光を浴びるということが、なかなかない。
「他人が自分のことをどう思うかに関心がない」
©Kaz Nagatsuka
2023-24のBリーグ・ベストファイブに、B1全体2位の勝率(48勝12敗)の成績を記録したアルバルクからは誰も選出されることはなかった。10人の候補者にセバスチャン・サイズとテーブス海が残るだけだった。
コーチや選手、メディアからの投票によって決まるこの賞で、ロシターがどれほどの票を得たのはかはわからない。平均10.8得点、9.4リバウンドという数字は確かに突出したものではなかった。だが、スタッツシートには表れない貢献度を考えた時、ロシターの名前が浮かぶ者は少なくないと信じたい(主要な数字として捉えられはしないが、昨シーズンのロシターの「+/-」は、B1で4位の9.3だった)。
ロシター本人へ、率直にぶつける。過小評価されてはいやしないか、と。すろと35歳のベテランは「そんなことはなんてこともない」といった調子で、言葉を返してくる。
「だいぶ前に学んだんだ。そういった賞に意味はないと。僕は他人が自分のことをどう思うかについて、本当に関心がなくて、試合の中ですべてを出し切ることだけを考えている。ファンや多くの人たちがスタッツに関心があって、5点取った、6点取った、7取ったけど、(僕のような)帰化選手としては物足りないななどと言っているのを知っている。
だけど、僕にとっての目標は勝つこと。試合によって僕がより多くのシュートを打つこともあれば、2本しかシュートを打たないこともある。味方の誰かの調子が良ければ、僕はその邪魔をしたりはしない。僕の仕事は、いかなる形においてもチームを勝たせること。その上で、僕が過小評価されているというのであれば、仕方のないことさ」
アルバルクのデイニアス・アドマイティスヘッドコーチは、ロシターがベストファイブの最終候補にさえ選ばれなかったことについて、笑顔を浮かべながら「意見を申し上げるのは避けたい」としながら、「毎試合、チームが必要をしていることをやってくれている」と同選手が手駒としていてくれることの心強さを強調する。
「どの選手も自分がしたことに対して報われることを望んでいます。ですが、スポーツにおいて最も重要なことはチームとして何かを成し遂げることです。そしてライアンにとって最も大事なものはチームなのです」(アドマイティスHC)
ロシターは、1試合のキャリアハイで52得点、24リバウンド、13アシスト、6スティール、5ブロックという数字を残している。どれをとっても傑出した数字だ。
だが、そのどれもが試合の状況によってもたらされたものでしかないとでも、彼ならば言いそうだ。