一昨年のリーグ制覇から一転、昨季はポストシーズン進出すら果たせなかった宇都宮ブレックスは、当然、2023−24での捲土重来を狙っている。
その中で佐々宜央ヘッドコーチが、今夏のFIBAワールドカップでは日本代表のアシスタントコーチとして経験したものを、自チームでも採用しているのが興味深い。
とりわけ外国籍選手に関して、昨季までの宇都宮ではリングの近くでプレーするスタイルの選手が主だったが、今季はPG/PGのD.J・ニュービル(前大阪エヴェッサ)や元日本代表で3Pも打てるギャビン・エドワーズ(前千葉ジェッツ、帰化)らが加入したこともあり、より世界の潮流に近い、スペースを広く取るオフェンススタイルに挑戦しているのだ。
佐々HCはそれを「Bリーグすぎるバスケットにならないように」することだと、換言している。
「Bリーグすぎるバスケット」とは、ポストプレーなどリング近くでのプレーのことだと解釈するが、代々木第一体育館で行われた15日の対アルバルク東京戦では、佐々HCの「宣言」通り彼の宇都宮がそうしたやり口から脱却しようとしている様が見受けられた。
例えば、アルバルクが196cmのSF、吉井裕鷹をコートに立たせている時間帯で、彼はPFグラント・ジェレットら自身よりもはるかに身長の高いビッグマンとマッチアップしたが、だからといって宇都宮がそこをついて彼らにポストアッププレーをさせたわけではなかった。
「今年のコンセプトとしてはやりたくない」と佐々HCは、試合後にそう話した。もちろん、相手がどういった守り方をしてくるかなどもあって、勝負に勝つための選択をする場面は当然、出てくる。ポストアップにしても、絶対にしないというわけではないはずだ。
ただ、日本代表がそうであったように、原則は「ダイナミックにスペースをとりながらドライブをして、キックアウトをして、3Pを決めていくようなチームにしたい」と、佐々HCは強調している。
15日の試合は、アルバルクが3Pを打たせないようなディフェンスに徹してきたこともあってロースコア(71-70)での辛勝となったが、それでも、佐々HCが話す「新スタイル」をチームが体現しようとしていたことは、十分に見て取れた。
正PGの鵤誠司とSGの比江島慎に加えてニュービルが入ったことで、攻撃の起点は明確に増えていている。特に比江島とニュービルがピックアンドロールを使いながら展開するオフェンスはダイナミックかつ相手のディフェンスをオフバランスにできていいる。こうしたところは、従前のブレックスにはあまりなかったものであるし、佐々HCが意図するところなのだろう。
もちろん、新戦力の加入や新たなスタイルの浸透には時間がかかるものだが、佐々HCは「結果を出していない」という昨季のやりかたに戻すような「考えはまったくない」と、この新スタイルでやり続ける覚悟だ。
今季、ここまで3勝1敗とまずまずの滑り出しとなっているが、長いシーズンで宇都宮の「新たなブランドのバスケットボール」がどこまで練度と高めていくのか、見どころだ。