前回のA代表招集での反省を生かし「一喜一憂しない」心を培った今村佳太の新境地
パリオリンピックのメンバー入りのチャンスは大きくないと自身を客観視する28歳は、選考レースの中でどこまで力量を示せるか
©FIBA
今村佳太の言葉には落ち着きがある。そして、パリオリンピックへ向けてここから熾烈な争いが始まっていくというピリピリとした雰囲気を漂わせていない。
換言すれば、肩の力が抜けている。
一喜一憂しない――。
選ばれたということは自分のこれまでやってきたことを見てもらった結果かなと思います――。
まだ自分がコート上で何かを成し遂げたというわけではないです――。
現在行われているFIBAアジアカップ予選Window1の期間中、今村やこのセリフを複数回口にしている。取材者をまっすぐ見据えながら話す彼の声も、大きすぎず、しかし小さすぎもしない、自然なものだ。だからこそ、言葉のすべてに説得力がある。
「ここ2年くらいの経験の中で自分がたくさん悔しい思いをしてきたというのもあるので、そういうものの積み重ねがあって今の自分が自身を持ってプレーをできるというのがあるので、経験が今の自分に生きていて、それがこの落ち着きに繋がっているなと思います」
アジアカップ予選の中国戦を翌日に控えた24日。練習後の今村はそのように語った。
今村の言う「悔しい経験」の中には、2022年夏のワールドカップアジア地区予選Window3が含まれる。今村はこの2戦でA代表デビューを果たしたが、平均4得点、3Pの成功率は22.2%に終わるなど強い印象を与えることができず、同予選の残りのWindowで出場することはなかった。
「初めてのA代表だったので、自分としては肩に力が入っていた部分はあったと思いますし、そこが自分の強みやバスケットボールはどういうことなのかを考えるきっかけにもなりました。代表もそうですし、Bリーグでも準優勝や優勝を経験してと、いろんなことがあったので、その経験が一番大きいかなと思います」
琉球ゴールデンキングス所属の28歳は、昨夏のFIBAワールドカップメンバーには選出されはしなかったものの、今夏のパリオリンピックのロスター入りに割って入ることが期待される選手の1人と考えられている。
22日に行われたアジアカップ予選Window1・グアム戦で日本が77-56で勝利する中で、ベンチから登場した今村は計16分強のプレーで3Pを1本決めるなど8得点を挙げた。これまでホ―バスHCのチームのシューティングガードには、とりわけ3Pシュートによる得点が求められてきたが、そのポジションの今村には得点だけでなくボールハンドラーとなる役割が期待されている。
しかし、今村自身はオリンピックロスターに名前を刻む可能性は「大きくない」と、現実的だ。
「その辺はトムさんが判断することだと思いますし、自分の結果にはあまり固執しすぎずにやっていきたいなというのはあります。やっぱりまだまだチャンスは少ないなと思っています。ただ、(グアム戦では)もう少しインパクトを残せる部分もあるんじゃないかと思うので、自分に厳しくやっていきたいと思います」
盟友・岸本隆一からもらったメッセージ
ここ2年連続でBリーグファイナルに進出するなど、ここ2年ほど琉球は真の意味で日本のプロバスケ界の常勝軍団へとなったが、その成長曲線はそれは今村というエースプレーヤーのそれと比例しているといっても過言ではない。
その琉球を代表する選手となった今村は、同軍の桶谷大HCや仲間らからの言葉も背に今回の代表活動に臨んでもいる。
「桶さんからは『おめでとう』と言ってもらいましたし、あとは岸本隆一選手からはグアム戦前だったと思うんですけど、『オリンピックの選考は直前になるまでわからないと思うので気負うことなく、遠慮せずにやってこい』みたいなメッセージをもらいました。そうやって一番近くで見てくれている人なので、それですごく肩の力が抜けたところがあったと思います。
自分のことを認めてくれている人がそう言ってくれたことは自信にもなるので、すごく嬉しかったですし、琉球ゴールデンキングスを背負っている部分もあるので、ブースターの皆さんが楽しみにしてくださっているでしょうから、しっかり受け止めて頑張っていきたいなと思います」