土台を作る。頭は下げない
横浜ビー・コルセアーズの安藤誓哉は、広島ドラゴンフライズへの完敗も「解決策はある」と前向きさを失わなかった
最終の結果は94-79。最大では20点もの差をつけられた。
水曜の晩に行われた10月29日の試合。完敗、と他者からされても抗弁できないほどの内容だった。その前には2連勝を収め、さらに波に乗っていことしていた矢先に厳しい現実をつきつけられた。
「私たちは先週(の連勝)からさらに上昇していこうと思っていたところに優勝が可能だと思われるようなチームと対戦したわけですが、(とりわけ今日の)後半戦は対抗することができませんでした。ですから、当然ながら失望しています」
相手は現在、平均93.1得点とB1で1位の得点力を誇る広島ドラゴンフライズだった。試合後、横浜ビー・コルセアーズのラッシ・トゥオビヘッドコーチはこのように話した。いつもならば負けた試合の後でももう少し言葉を紡いでいるはずの指揮官だが、この日はそうするだけの燃料が彼の中に残っていなかったのか、口から出てくる発言の量は少なかった。
そんなトゥオビ氏を見た後だっただけに、なおさらだったところもあったかもしれない。安藤誓哉の様子や言葉から前向きさが失われていなかったことが、際立ったようにも思われた。顔色にこわばった様子はまるでうかがえない。目線はしっかりと取材者の目に向いていた。
負けは悔しいに違いないものの、だからといって頭を垂れることはなかった。横浜BCからすればうまくいかなかったことが少なくなかった。15点差という「結果」はその証左だ。それでも安藤には、プレーに修正を加えればうまくいきそうだという手応えがあった。
「今日の試合でもけっこういろんな(良い)シーンもあったので、直していけばまた良くなるかなと思います」
広島戦後、安藤はこのように話した。その声の張りはいつもの彼のそれだった。負けはしたが、前を向くいつもの彼がそこにいた。
まだ開幕から1か月。トゥオビHCのやろうとしているバスケットボールというものに対しての選手たちの共通理解がどれだけあるか、そして相手の出方に応じて順応を加えつつそれをいかにコート上で体現ができるか。そこがまだ、足りていない。広島との試合でいえば試合当日のウォークスルーの中で確認したことの再現をしきれなかったと、安藤は振り返った。
しかし、惜しいところまで来ている。歯車は徐々に噛み合い始めている。安藤の弁にはそんな感触が見えた。それは「解決策はぜんぜんあるなって思っているので」という彼の言葉に現れていた。
トゥオビHCの敷くバスケットボールが十全に機能し始めた時に、今は苦戦が続く横浜BCはどのような躍動を見せるだろうか。33歳の安藤の頭にはそれが見えていそうだ。元々の人間性もあるだろうが、言葉でも態度でも彼が前向きさを失わないのはそれが拠り所になっているからに違いない。
安藤はチームとしての「しっかりとした土台をまずは作りたい」と話した。プロスポーツにおいて土台は、ひと月、ふた月でできるものであるはずがない。選手間で絶え間なくコミュニケーションをとりながらトゥオビ氏のバスケットボールの共通理解を深めることや、選手一人、一人に与えられた役割をより精緻にこなしていくことで、「しっかりとした良い土台ができる」(安藤)。安藤はそうした作業を繰り返していくことこそが肝要だとした。
広島との試合の後半の横浜BCには攻守でミス、あるいはそう呼んでもいいようなプレーが続いた。それに乗じて広島は得点差を広げていった。
「この試合は私たちがこのグループ(上位チーム)と同じステージにはいないことを証明したと思います」
トゥオビHCは率直にそう述べた。同じステージにいないというのは現段階はという条件であるはずではあるが、それ以前の敗戦時よりも彼の言葉に宿った力は弱まっていたように感じられた。
もちろん、チーム全体を預かる者とそうでない者という立場の差はある。が、安藤の語気に萎える様子はなかった。
「今日も10……20点近く開いていたのかな。どうしてもこういう局面になると点数差を見ちゃうっていうのは当たり前ですし。(でも)20点差だろうが10点差だろうが、プレーは変わってくるかもしれないけど、気持ちの入れ方とかは変わっちゃいけない。シーズンは続いていくので。今週末も試合があるし、どれだけポジティブに、しっかりと情報を集めて(課題の)解決をできるかというところは続いていくもの。(チームメートたちには)そこは声がけをしましたね」
試合が終われば、また次の試合が迫ってくる。シーズンは連綿と続いていく。本当の強者とは、勝敗に一喜一憂しないもの。安藤誓哉の言葉や姿勢には、それが感じられる。





