プロデビューを果たした菅野ブルース「将来的には日の丸を背負うポイントガードに」
アメリカでのプレーを経て分厚い肉体を携えて千葉ジェッツ加入の男は、こだわりのポジションでコートに立つことを目標としている
©Kaz Nagatsuka
身長200cm、体重93kgと登録されている。
その体重がはなはだ、怪しい。そう疑ってしまうほどに、菅野ブルースの肉体が分厚く、大きい。
11月9日。今シーズン、米NCAA1部・ステッッソン大学を離れて千葉ジェッツに加入した21歳は、ホームでの名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦でプロデビューを飾った。
最終第4クォーターの残り4分強となって、故障のために開幕からずっとベンチから試合を眺めてきた菅野がコートに立った。その時点で千葉Jが大差をつけ勝負を決していたとはいえ、菅野は試合終了までの短い時間の中で、その逞しい身体を利して計4つのリバウンドを記録した。
初出場に「ちょっとあがってしまった部分があった」と菅野は試合後、振り返った。同時に「ここからがスタート」とも語っている。仙台大附属明成高校時代には年相応に身体だけでなく、声も細かったが、その話しぶりはプロデビューの嬉しさとこれからへの自身への期待が込められた、低く、太く、頼もしい声だった。
日本バスケットボール界の盛り上がりにつれ、アメリカを中心とした海外の大学等でプレーする日本人選手は増えている。とはいえ、菅野のような恵まれた才と体躯を持つ者を求めることを、そうそうはできない。
プロの舞台に立ったばかりの若者についてこう述べるのは早計なのかもしれないが、菅野が将来的に高いレベルでの成功を収める可能性は、他の多くの者に比べて高いのではないか。
千葉Jのトレバー・グリーソンヘッドコーチも、菅野の使い所を探っていくと話しながら、「彼は間違いなくアスレティックマシーンだ」と述べ、菅野の個の力量を高く評価している様子だった。
「彼はとても俊敏で、シュートのブロックができ、爆発的なスピードがあります」(同HC)
もっとも、菅野としては単にコートに立つことができればいいわけではない。彼は当時明成高校を指揮していた佐藤久夫コーチ(故人)のビジョンの下、大型ポイントガードとしてプレーをしていた。
以来、そのポジションを担うことにこだわりを持つようになった。エスズワース・コミュニティ・カレッジ(米アイオワ州)から、いくつかあった候補のなかからステットソン大学(米フロリダ州)へ編入したのもPGでプレーができる可能性を感じたからだった。
ただ、菅野の司令塔としてプレーがしたいという思いは、なかなか実現に至っていない。ステットソンではガード・フォワード、そして現在、千葉Jではシューティングガードとして登録されている。
「彼は強く、速いから2番(SG)も3番(スモールフォワード)、4番(パワーフォワード)も5番(センター)も守れます。今は、彼がどのポジションで力を発揮できるのかを探っている最中です」
菅野の今後のポジションについて、グリーソンHCはそのように話した。
だが、PGとしてコートに立つという菅野自身の胸の内にあるこだわりが薄らいだ様子はない。
菅野が、言う。
「今は2番、3番といいうポジションですけど、将来的には1番⋯日の丸を背負うことのできるPGになっていきたいと思っています。それまでにスキルはもちろんですけど、経験もとても大事になってくると思うので、鍛えていきたいなと思っています」
ただし、自身がPGでやっていきたいという希望を菅野はまだ、グリーソンHCには話していないという。
「これからしっかり信頼を得て、言っていきたいと思うんですけど、まずは自分が担っているポジションで結果を出してから、そういうところに行けたらと思っています」
HCに思いは伝えたのかと尋ねられると菅野は、「いえ、まだ」とはにかんだ表情を浮かべて、そのように話した。
日本のバスケットボールが急成長を遂げているとはいえ、2m級の大型PGの誕生がいつになるのかは、いつになるのか何とも予測のつかない、しかし、ファンや関係者からすれば楽しみなテーマである。