「物事を重く考えてしまってはいけない」 陽気なデビン・オリバーがコート内外でビーコルを支える
今季、横浜BCで2年目を迎えている31歳は多彩な能力でインサイド、アウトサイドで活躍する一方で、チームのムードメイカーの役割も担っている
「子供の頃なんかもいつもまわりを笑わせようとしていたから学校では怒られていたよ。だけど、それが僕という人間なんだよね」
横浜ビー・コルセアーズで2シーズン目を迎えているSF/PFデビン・オリバーの存在が、異彩を放つ。コートではインサイドでもアウトサイドでもプレーができる万能さを持つ貴重な戦力となっているが、プレーをしていない時でも、彼の明るさがチームにエネルギーをもたらしている。
チームは昨季、Bリーグで初めてポストシーズンへの切符を掴んでセミファイナルにまで進出するなど大躍進を果たした。選手も球団もここから“ビッグクラブ”の仲間入りを目指すと公言している。鼻息が荒いのは結構だしチームに勢いがあるのは間違いのないところだが、千葉ジェッツや宇都宮ブレックス、アルバルク東京のような経験のないチームは、良くも悪くも一心不乱になりすぎてしまいかねない。
だからこそ、オリバーのような「抜き方」を知る選手がいることの意義は大きくなる。試合前の選手紹介の際に、彼が独特かつおもしろおかしい「ダンス」を披露し、チームメートたちにも声をかけて回る姿は、横浜BCのファンならばおなじみの光景だ。
オリバーはそうしたことをする意図について、こう話してくれた。
「物事を重く考えてしまってはいけないし、僕らはできるだけ緊張を抑えて普段通りにできるようにしておくべきなんだ。僕はオフコートでは、過去の経験も用いながらみんなに一体感をもたせることの大切さを知っているし、練習などを楽しみながらやることは、オンコートでの出来にも関わってくるんだ」
22日の琉球ゴールデンキングスとの試合に完敗(88-70)を喫した横浜BCだが、そういう時は「記憶力は短いほうがいい」と、オリバーは敗戦からすばやく気持ちを切り替えていた。
今季はエースとしてよりリーダーシップを発揮するPG河村勇輝も「真面目で静かな選手が多い」横浜BCの中で「陽気で常にお喋りしている」オリバーの存在は「すごく大きい」と語っている。
琉球戦で決めたノールックパス
31歳のオリバーは今年、チームで2番目に年長の選手で、リーダーシップをより積極的に取ることを意識する。昨季はレギュラーシーズンの60試合とプレーオフの全試合に先発出場した彼は、今季はPFジェロード・ユトフの加入などによりベンチからの出場が続いている。そのため平均出場時間は2022-23から約5分減っており、その他の数字も軒並み下がっている(22日終了現在。一方、3Pの成功率が47.1%と高くアシストも同3.8へと増え、かつeFG成功率は脅威の69.6%を記録している)。しかし、そうした起用法についてオリバーにくすぶった様子などは、まったく見うけられない。
シーズン序盤の現在、選手たちはまだまだ自身の役割を探っている段階だとするオリバーは、自身のそれも昨季とは異なっていることを認識しながら、今季は「もう少し積極的に、自己主張を込めながらプレーをしないといけないと思っている」と言う。
横浜BCは現在「今年のチーム」として何ができるかを探っているところだとしたオリバーだが、在籍2年目となり昨季から継続してコートを共にしているチームメートらとの呼吸は、より深まっている。
21日の琉球との試合の第3クォーター中盤。ペイント内へ走り込んだオリバーはC/PFジョシュ・スコットからボールを受けると、それをほとんどタッチパスのような形で、しかもノールックで、逆コーナー付近でオープンになっていたSG須藤昴矢へパス。須藤が見事に3Pを決め、会場が大いに沸く場面があった。
このプレーについてオリバーは「昨季から一緒にやっている選手たちがどこに位置どりをするかなどはわかっている。僕がそのまま攻めてもヴィック・ローが立ちはだかって僕を止めようとしていただろうしね」と振り返った。
横浜BCは河村が中心選手として絶対的な注目を集めるが、経験豊富でムードメイカーのオリバーの存在も同チームが今季、優勝を狙うにあたって欠かせないものだ。