試合の出だしは完全に相手の宇都宮ブレックスにペースを持っていかれていたが、そこでも、そこから立て直すことで最後は敗れはしたものの、1点差に惜敗にまで持ち込んだ。
2人続けて1万人以上の観客を集めて行われた15日の試合だ。アルバルク東京にとって今季初の黒星となってしまったが、出来が悪い中でも一定の手応えを得てもいる。
強豪の印象の強いアルバルク東京だが、2017-18からのリーグ連覇を知る選手は、いまやSF/PFザック・バランスキーとC平岩玄が残るのみだ。
今季は5人の新加入選手がいて、しかもそのうちの2選手――SF/PFレオナルド・メインデル(ブラジル)とCアルトゥーラス・グダイティス(リトアニア)――が異なる国の出身だということもあって、シーズンの序盤はまず選手間の化学反応を高めていく作業が重要になってくる。
一方で、デイ二アス・アドマイティスヘッドコーチ体制となって2年目に入ったこともあり、チーム内でのコミュニケーションはよりよく取れるようになっているという。
15日の宇都宮ブレックス戦(71-70で敗戦)。SG安藤周人は、今年のチームには選手たちがそれぞれが言いたいことを言える空気があるとし、それを吐き出した上で「やるべきことを遂行できれば自分たちが勝てると貫いて」いると語っている。
それぞれが言いたいことを言う――。安藤によれば、アドマイティスHCが発言しようとしている時でも、PF/Cライアン・ロシターがさえぎって話し始めるといったこともあるそうで、それは同HCの選手たちへの信頼の証でもあると言う。
「僕もコーチを信頼していますし、コーチも選手を信頼してくれているというのは、今年2年目になってそういう部分はすごく浸透してきています。コーチも選手だった(アドマイティスHCはリトアニア代表のSFとして2000年シドニー五輪で銅メダルを獲得している)からこそわかってくれていて、選手のやりたいようにやらせてくれるというコーチなので、新加入の人はまだまだ浸透できていないと思うんですけど、去年いた選手にはかなり浸透していると思います」(安藤)
指揮官の言葉が吹っ切れるきっかけとなった安藤
安藤個人も、アルバルクに来て今季が3年目となるが、昨季はアドマイティスHCが初年度だったことや、主力で同じポジションの田中大貴(現サンロッカーズ渋谷)が故障で開幕から欠場するなど難しい状況でのプレーを強いられたところがあった。
その中で、安藤の混乱しら気持ちを晴らしてくれるきっかけがあった。
2022年10月、ブレックスアリーナでの宇都宮との連戦の2戦目。安藤は得意の3Pが入らずに苦しみながらも、終盤に長距離砲を2本決めて勝利(60-57)に寄与した。
この試合の直後、同HCからかけられた言葉で自身がやるべきことが鮮明になったのだ。
「試合後のインタビューでコーチが先に話して、その後、僕に代わる時に彼から『打ち続けてくれてありがとう。打ち続けてくれたからこそシュートが入ったと思うし、チームのために君は打たないといけない』と言ってもらって。そこから気持ちは吹っ切れましたね」(安藤)
15日のブレックス戦では7本の3Pを放ち、うち3本を沈めている。第3クォーター終盤には2本連続で決め、自軍にモメンタムをもたらしてもいる。
アルバルクの「ゲームデイプログラム」の各選手の紹介で、安藤は「アルバルクの浮沈のカギを握る新エース」と記されている。
アルバルクには純然たるシューターが少ないこともある。その惹句が示す通り、アウトサイドからの得点を含めた安藤の出来が、チームの成績につながると言えるだろう。