「エース」であることは、自他ともに認めるところだ。今シーズン、その看板をより明確に背負うようになった河村勇輝の口から出てくるのは、勝てばチームの勝利であり、負ければ自身に責任があるという言葉が多い。
「オフェンスに関して言えば、今日は完全に僕のコントロール不足でした。この試合はすごく大事だったと思うし、同地区で絶対に連勝しないといけないというところで、僕のコントロールミスで特に後半、オフェンスがうまく回らなかった。本当に悔しい限りで、本当に申し訳ない。でも、この発言を今シーズン、何回するんだっていう話だと僕は思っているので、もっと、もっと、責任を持ってプレーをしないといけないと思っています」
横浜ビー・コルセアーズがここまで苦しいシーズンを送る中では、後者のコメントが彼から発せられることはほとんど毎回のこととなっている。いや、勝った試合ですら、聞こえてくるのは反省の弁であることが多い。
12月31日、ホームでのシーホース三河との連戦、2戦目。横浜BCは前日の勝利から一転、完敗を喫した。上のコメントは、その試合後の河村のものだ。その前節に佐賀バルーナーズ相手に屈辱的な連敗を喫していたフラストレーションもあったはずだが、中地区の上位チームとのゲーム差を縮めていくためには勢いをつける連勝が必要なチームにとって、堪える敗戦だった。
確かに、河村はボールを持つことの多いポイントガード選手で、出場時間も長く、彼自身がチームの「システム」といったところがある。しかし、客観的に見て、河村が1人で――時として痛々しいまでに――背負いすぎているようにも感じられる。
「勇気は勝ちたがっているが、まだ学びの途上にある」
そんな筆者の思いを、チーム最年長のデビン・オリバーに伝えた。すると、アメリカ出身の31歳は9歳年下で正式なプロとなってまだ2年目でしかない河村について、半ばかばうような口調で、このように話した。
「特に彼とはそういうこと(背負いすぎていること)について話したりしたということはないんだけど、一つ言えることは、勇輝は勝ちたがっているということ。彼はいつだってそういう気持ちでやってきた。ただし、彼は自分がどうやってプレーすべきかと未だに模索しながらやっている。それだけ彼は若いんだ。もっと年のいった選手のように振る舞っているけど、彼は若いんだ。試合の流れや、いつどうすべきかを未だにさぐりながらプレーしている。まだまだ学びの途上にあるんだよ」
オリバーは横浜BCだけでなく日本のバスケットボール界の代表的な選手となり常に注目を集める河村の背負う重圧についても、こう慮る(おもんぱかる)。
「日本全体が勇輝に対して注視している。それについて彼が僕に話をしたことはないけれど、僕が見るからに彼は日本全体を背負ってすらいる感じだ。それは良い意味でね。皆、彼が活躍するところを見たがっている。ただ僕個人としては、彼が必要以上にプレッシャーを感じてしまっているのではないかと思うんだ。とはいえ、彼は良い時も悪い時も前向きでいてくれる。そこについては自信を持って言えるし、彼のような若い人物にそれができることについてリスペクトしているよ」
「僕らが負ければ、彼も悔しがる。だけどそれは彼が良いプレーができなかったからではない。反対に、彼が良いプレーをしたからチームが勝ったとも思っていない。彼はいつも、どうしたら向上できるかを考えている。彼が望めばここからまだ20年だってプレーできるんだ。だから彼にとっては学びの途上にあるし、僕が彼に伝えることを素直に聞いてくれているよ」
勝利を渇望する「エース」、河村。急速に成長を続けてはいるものの、まだまだ伸びしろを埋める作業は終わらない。そして、その作業を続ける間は、彼の口から漏れ出てくる言葉はチームを背負う、悲痛なまでの反省の弁か。