「打ち切る気持ちが大切」 河村勇輝がビッグマン相手でも3Pを決めるようになった要因
昨季はジョシュ・ホーキンソン、FIBAワールドカップではラウリ・マルカネンの頭上を越える長距離砲をねじ込んだ横浜BCのエースPGの得点力向上が止まらない
日本男子代表チームのトム・ホーバスヘッドコーチによる指導をきっかけとして、河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)がアシストパスばかりでなく自身も「リングを向く」、つまり得点をより積極的に狙いに行くようになった話は、様々なメディア媒体で紹介されている。
その積極性は、試合の流れの中で相手の2m10cm前後のビッグマンと対峙した時も変わらない。
昨季、3月末の対信州ブレイブウォリアーズ戦。試合を左右する終盤でジョシュ・ホーキンソン(現サンロッカーズ渋谷)を相手に1対1となた河村は、208cmのホーキンソンの頭上を越す3Pをねじ込み、勝利を手繰り寄せている。
そして、今夏のFIBAワールドカップ・フィンランド戦。第4クォーターでラウリ・マルカネン(ユタ・ジャズ)とのマッチアップとなった彼は、同じようにこの213cmのNBAスター選手の上から3Pを決め、日本代表が18点の差を跳ね返す逆転劇に寄与した。
いずれの場合も、河村はアイソレーション気味で、ドライブインへ行くスペースはあったように見受けられた。いや、従前の彼ならば、そのような場面ではドライブインをしてそこからのレイアップやパスをさばくといったプレーの一択だったはずだ。河村をより長く見ている者からすればなおさら、ホーキンソンやマルカネンの頭越しの3Pには驚いたに違いない。
河村は無論、技術面での成長にも余念がなく、日本代表ではホーバスHCや、アシスタントコーチのコーリー・ゲインズ、佐々宜央両氏らとのスキルワークアウト等を経て「いろんなムーブや、相手の対応を見てどういう選択肢を持つのかといったところを教わった」と話している。だがそれよりも、上述したようなプレーができるようになったのは気持ちの面での成長のほうがより大きいと彼は言う。
「バスケットボール選手として一番大切なことは自身を持てるかどうかだと思っているので、1対1になった場面でも思い切り3Pを打って、決めきる自信がついがのが要因だと思いますし、またワールドカップなどでトップレベルの選手たちから1対1の場面で3Pを決めることができたというのも一つ、自信を持てた要因でもあると思います。
「技術も大切かなとは思いますが、それ以上に大切なのはマインド。自分はやれるんだとか自分はシュートを打ち切って決められるんだっていう気持ちがあれば、あとはシュートに任せるというところかなと思うので、今はそういうメンタル、いつだってシュートが決められるという強い気持ちがあるからこそ、そういった結果として表れることもあると思っています」(河村)
河村をスローダウンさせるのは誰か
昨季はB1で6位となる平均19.5得点をマークした河村だが、今季は同1位の26.3得点とさらにスコアラーとしての力量を発揮している。3Pの試投数が平均9.7本と昨季から0.9本増えており、成功率(36.2%)も上がっていることから、よりコートのあらゆるところから得点を狙うことができるようになっている。
先述のワールドカップでマルカネンとの1対1となった場面は、スイッチディフェンスでそうなったのではなく、フィンランドが意図的に同選手に河村を守らせた。しかし、河村がドライブイン「一択」から3Pも打てる「二択」の選手になってしまった以上、マルカネンやホーキンソンといったビッグマンをあてるのはもはや得策ではないように映る。
直近節の対琉球ゴールデンキングス戦。連戦の初戦で201cmのPF/SF、ヴィック・ローを河村にあてる時間帯があった。これは彼が昨季在籍した千葉ジェッツもやってきたことだが、大きいだけでなく機動力も高いローのディフェンスは河村をスローダウンさせるのに有効だったと言えた(河村のロングシュートをローがブロックする場面もあった)。
河村も「ヴィック・ロー選手はかなりディフェンスがうまいと思い」「駆け引きなどはヴィック・ロー選手が一番うまいと思っている」と相手の守備を評価している。
外国籍、日本人と問わず、今のBリーグにローほどの高いレベルのディフェンス力を持ち、河村を抑えられる長身選手はさほどいないだろうが、ドライブインだけの選手でなくなった河村を誰が止められるのかは今季の見どころの一つになっていくはずだ。