日本女子バスケ代表、チーム内競争激化の予感も待たれる「ポスト高田」の出現
アジア競技大会で銀メダル獲得となった"アカツキジャパン"。今後の選手選考は激化しそうだが、インサイドの層の薄さは否めない。「5対5のバスケで自分に勝てる人はいないかな」と語る高田を脅かす選手はいつ出てくるだろうか。
日本女子バスケットボール代表が5日、アジア競技大会の決勝戦で中国との激闘の末、74-72で敗れ、銀メダルに終わった。
今大会にはパリオリンピックでの金メダル獲得という目標達成を見据えた強化が主眼だったが、アジアカップで日本の上位得点者2名だったステファニー馬瓜(スペインリーグ・エストゥディアンテス)と山本麻衣(トヨタ自動車アンテロープス)が欠場となり、恩塚亨ヘッドコーチは彼女たちの不在は一つの挑戦になると語っていた。
蓋を開ければ日本は勝ち続け、決勝では主催国・中国のファンがアリーナを埋めたアウェイの雰囲気の中、あわや金メダル獲得かと思われるほどのパフォーマンスを見せた。
恩塚HCの敷く、高いアジリティ(運動量)と強度を40分間継続しつつ、相手の弱いところをつきながら自分たちの判断でプレーをしていくという難しいスタイルを選手たちがより体現しつつあるというところは成果を呼び込んだ要因となった。
一方、今大会では東藤なな子(トヨタ紡織サンシャインラビッツ)や川井麻衣(トヨタ自動車)らが良いパフォーマンスをし、馬瓜、山本らの穴を埋められたことも収穫となった(準々決勝と準決勝は東京羽田ヴィッキーズの本橋菜子が、決勝はENEOSサンフラワーズの星杏璃がそれぞれ体調不要で欠場した)。
昨夏、オーストラリアで開催された女子ワールドカップで1次ラウンド敗退と散々な結果に終わった日本は、そこからの出直しに取り組んできた。選手の陣容にも多少の変化があり、星や朝比奈あずさ(筑波大)といった新たな戦力が加わっている。また今回のアジア大会では、最年少で出場した東京オリンピック以降、代表では低迷していた東藤や、今回恩塚体制下では初めて招集された川井が躍動を見せた(東藤は平均9.5分だった出場時間を今回のアジア大会では20分弱と倍増させている)。
アジア大会での全日程を終了し6日に帰国した同代表。羽田空港で取材対応した恩塚HCは、こうした点について「評価できる」と話した。
今大会を経て今後、日本代表内での競争はより活発になっていくことが予想される。同じく空港で取材に応じたキャプテンの林咲希(富士通レッドウェーブ)と髙田真希(デンソーアイリス)の2人も、チームのレベルを上げるのに寄与すると、競争について歓迎した。
「(競争が)ないと弱いままですし、あったほうが危機感も感じられて強くなると思うので、そこを今大会では(チームの中で)見られたんですけど、練習中から出していきたいなと思いました」(林)
高田ほどの実績を築いてきたベテラン選手となればよほどのことがない限り、代表選考から外れるということは現実的にありえない。彼女自身も「年齢を重ねていくと『これくらいでいいか』みたいな感じが出てきちゃう場面もある」という気持ちになってしまうこともあると認めながら、他者とのポジション争いの中で「競争心を持つことでステップアップできる」と語った。
ただ、日本代表において高田に「競争心」を持たせてくれるような存在はいないのが現状だ。総じてチーム内の競争が増すことは歓迎すべきことだが、「高田頼み」からの脱却は変わらず目処が立っていない。
世界と比べてサイズに劣る日本にとってインサイドの選手の出現はなかば永遠の課題だ。身長185cmながら3Pシュートでも成長を見せる朝比奈に対する期待は大きく、今大会でも1次ラウンドでは相応の出場時間を得ていた。だが韓国との準決勝では9分弱、決勝はわずか40秒の出場となり、信頼度はまだまだ高くはない。
高田は「自分よりうまかったり能力のある選手はたくさんいますが、5対5のバスケットをするということでは自分に勝てる人はいないかなと思う」と話した。これは、自身が経験を積むことで得てきた力量についての自負である一方、そうした実践で世界と戦える存在の出現を待っている言葉のようにも聞こえた。
日本代表は2月のオリンピック世界最終予選(日本はハンガリーのショプロン市で開催の組となった)を戦い、そこでパリオリンピック出場を狙うことになる。恩塚HCは今後の選手選考について「パリオリンピックで金メダルを穫るために一番、チームに貢献できる12名でユニットを組むことを目指す」と明言した。
正直、インサイドの選手層の薄さについては同オリンピックまでの短い期間で解消されることはないだろうが、中長期的な視点で考えた時、「ポスト高田」たる選手の出現は必須となってくる。