©Kaz Nagatsuka
いらだちを隠せなかったのは、責任感と自身に対する期待の大きさに対して表裏一体だったと言ってもいい。
河村勇輝(現在、NBAメンフィス・グリズリーズと「エグジビット10」契約)が去り、ラッシ・トゥオビ氏を新たな船頭として迎え、新たな出航となった横浜ビー・コルセアーズ。
Bリーグ3シーズン目で昨年まではベンチから出場していた松崎は、2024-25、ここまでの4試合のすべてで先発出場を果たしている。
横浜BCは先週末、強豪・アルバルク東京と対戦し2連敗を喫してしまったが、敗戦という結果を受けてということだけではなく、試合中も、思うようなプレーのできないと感じていたのであろう、松崎の表情はずっと険しいものものだった。
とりわけ10月12日の初戦。今シーズン初めて無得点に終わった彼は、時に険しさ以上の、怒りに近い面様を浮かべていた。
「去年と立場が変わって、0点では本当にいけないと感じています。コーチ陣から求められていることも去年より高くなっていますし、オフェンスもそうですが、ディフェンスでも、(レオナルド・)メインデル選手のところでチームとして決めていたことを自分が遂行できなくて、本当にふがいないというか、何も貢献できていないことにストレスを溜めてしまったところもありました」
アルバルクとの2戦目の後、松崎はこのように話した。ちなみに、ここまでの松崎の平均出場時間は18分34秒で、同得点は5.8と昨季までとは別人のような数字を記録している。
横浜BCは2試合とも、流れを掴んで接戦にする場面も幾度かあったものの、アルバルクの局面での遂行力の高さや勝負強さの前に屈している。しかし、差が大きいものではなかったこともあり、松崎は自らに対するいらだちを体の表面に出してしまった自らを戒めた。
「そういったところが出てしまったことで、チームの雰囲気も悪くなってしまうので、抑えながら、自分のやるべきことをしっかりやらなきゃいけないなと思った2日間でした」
まだシーズン開幕から4試合しか経っていないから、完了形では記さない。が、河村という個の力量の高い選手がいなくなり、かつボールと選手をよく動かしながらチームとして戦うことをより前面に出すトゥオビHCの横浜BCは、松崎曰く「誰かに固執することのないバスケットボール」だ。
河村が挙げていた約20点の穴埋めを全員でしていく必要がある一方で(だからこそ松崎は「0点ではいけない」と述べている)、松崎が今シーズン、トゥオビHCから先発に取り立てられているのはディフェンス面での期待が大きい。身長192cm、体重95kgという重厚な体を持つ松崎は、外国籍の割合が増えているスモールフォワードの選手を守ることも多い。そのタスクは言うまでもなく、重たい。
アルバルクでいえば、それはメインデルだった。ブラジル代表の彼のような選手を押さえきることが容易でないのは言わずもがなである。それでも、やらねばチームが白星を積み上げることはままならないと、松崎は理解している。
「相手の3番の外国籍選手のところをおさえるとか、そういったところを求められてスタートで使ってもらっていると思っていますし、そこに応えなかったらチームにとってプラスにはなれないので、重く受け止めなきゃいけないです。必ず次の試合ではバウンスバックして(立て直して)、自分の持ち味やチームのためになることをしつづけたいなと思います」
松崎はこう述べた。うまくプレーできなかったことで自分にいらだちはあっても、卑下しているわけでないことは、口調やメディアをまっすぐ見据える顔つきで、感じられた。
これまで、きらびやかに目立つような選手だったわけではない。だが、今シーズンの松崎にはその背中に大きな責任がのしかかるのに比例して、見過ごすことのできない存在になりつつある。